動物媒介性の感染症

動物から人にうつる感染症のことを「動物由来感染症」と呼ばれますが、
感染経路は「直接伝播」と「間接伝播」に大きく分かれ、
病原体である動物に直接的に触れなくても、昆虫類などを媒介して間接的に伝播して人が感染をすることができます。

動物媒介感染症を予防するための基本
・媒介動物と接触する機会を減らす(例. 蚊などの媒介動物が多い場所を避ける、発生源となるものを無くす、駆除するなど)
・有効なワクチンを接種する

節足動物(昆虫・ダニ類)が媒介する感染症(ベクター媒介)

節足動物媒介感染症とは、蚊、サシチョウバエ、サシガメ、ブユ、マダニ、ツェツェバエ、ダニ、カタツムリ、シラミから伝播される寄生虫、ウイルス、細菌などによって人に起こる疾患です。
現在では、日本に昆虫が媒介する感染症の流行はありませんが、節足動物が媒介する感染症は、世界の全感染症の17%以上を占め、年間70万人以上の死亡者を出していると言われています。

例えば、2014年に代々木公園で70年ぶりに感染者が発生して騒がれたデング熱では、世界では128か国以上で39億を超える人々が感染のリスクにさらされ、年間9,600万人が感染しているとみられています。
最も危険な感染症に指定されているマラリアは、世界中で毎年40万人を超える人々を死に至らせており、そのほとんどは5歳未満の子どもと言われます。
この他の疾患にも、シャーガス病、リーシュマニア症、住血吸虫症など、世界で何億もの人々が感染していますが、これらの節足動物が媒介する感染症は、熱帯と亜熱帯地域で最も大きくみられます。
地球温暖化による気温や降水量の変化、グローバル化は、媒介する昆虫の活動の到達範囲に影響を及ぼし、以前は知られていなかった国、地域で病気を引き起こしたりすることがあります。
しかしながら、これらの疾患の多くは予防方法を知ることで防ぐことができます。

日本で問題とすべき節足動物
コガタアカイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどの蚊類
マダニ類、ツツガムシ類、コロモジラミ、アタマジラミ、ケジラミ、ハエ類、アタマジラミ、ゴキブリ類

病原体と感染症名

ウイルス:日本脳炎、デング熱、ウエストナイル熱(侵入の可能性が高い)、チクングア熱、ジカウイルス感染症、黄熱、ダニ媒介脳炎、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、腎症候性出血熱
リッチケア:つつが虫病、日本紅斑熱、発症チフス、
細菌:野兎病、赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、サルモネラ菌
スピロヘータ:ライム病
原虫:マラリア(過去に日本でも流行、現在は海外で感染して帰国後発症する輸入症例のみ)
線虫:フィラリア症(糸状虫症)
ダニ:疥癬(かいせん)
昆虫:シラミ症

ネズミ類などが媒介する感染症

ネズミ類は、サルモネラ症をはじめとする様々な食中毒の病原体やレストプピラ症の病原体を伝播します。

ネズミ類などが媒介する病原体と感染症名

ウイルス:腎症候性出血熱
細菌:ペスト、サルモネラ菌、鼠咬症(そこうしょう)
スピロヘータ:レプトスピラ症

殺鼠剤でのねずみ駆除を行う場合には、死骸が原因によるハエ類やマダニ類、ゴキブリ類などの媒介動物の発生に注意する必要があります。

感染症発生動向調査週報ダウンロード2021年
https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2021.html